メニューの「オプション」「ダイアログを出す」で
左の図のようなダイアログボックスが出現します。
前章と同じくダイアログボックスの右上には「?」マークのボタンが
ついています。
「?」マークボタンを押して「BASIC」と書かれたスタティックコントロールを
クリックすると左の図のようなポップアップウィンドウが出現します。
他のボタン等も同様にポップアップウィンドウが出ます。ポップアップウィンドウの
文字色が赤であることに注意してください。
しかし、今回はさらに「?」マークボタンを押さずにいろいろなところを右クリックしても
ポップアップウィンドウが出ます。この時ポップアップウィンドウの文字は黒で
背景は白色です。
今回のプログラムに必要なものは、テキストを含むHTMLヘルプ(*.chm)とそのテキストファイルおよび
ヘッダファイルです。
ポップアップウィンドウを出すにはHH_TP_HELP_WM_HELP または、HH_TP_HELP_CONTEXTMENU または、HH_DISPLAY_TEXT_POPUP コマンドを使います。
テキストファイルの名前がCshelp.txt以外の時はHH_TP_HELP_WM_HELP コマンド hwndCallerには、ダイアログボックスのコントロールのウィンドウハンドルを指定 pszFileには、chmファイルの名前を指定。テキストファイルの名前が Cshelp.txt以外の時は、テキストファイルの名前も指定。 dwDataには、DWORDの配列を指定
test.chm::/xxx.txt
のように指定します。
dwDataに指定する配列は
DWORD ids[3];
ids[0] = コントロールのID;
ids[1] = 表示したいテキストのID;
ids[2] = 0;
というように指定します。配列の最後は必ず0にします。
使い方はHH_TP_HELP_WM_HELPと同じです。HH_TP_HELP_CONTEXTMENU コマンド hwndCallerには、ダイアログボックスのコントロールのウィンドウハンドルを指定 pszFileには、chmファイルの名前を指定。テキストファイルの名前が Cshelp.txt以外の時は、テキストファイルの名前も指定。 dwDataには、DWORDの配列を指定
さて、HH_POPUP構造体は次のように定義されています。HH_DISPLAY_TEXT_POPUP コマンド pszFileは、テキストがHH_POPUP構造体に含まれているときや リソースに含まれているときはNULL。chmファイルに含まれている テキストファイルを使うときはそのファイル名も指定。 dwDataには、HH_POPUP構造体へのポインタを指定。
cbStructには、この構造体のサイズを指定します。typedef struct tagHH_POPUP { int cbStruct; HINSTANCE hinst; UINT idString; LPCTStr pszText; POINT pt; COLORREF clrForeground; COLORREF clrBackground; RECT rcMargins; LPCTStr pszFont; } HH_POPUP;
hinstには、リソースを含むプログラムまたは、dllの インスタンスハンドルを指定します。idStringが0の時または ファイル名を表すときは無視されます。
idStringには、0またはリソースIDまたはテキストファイルのトピックID
pszText は、idStringが0の時表示するテキストを指定します。
ptには、表示するポップアップウィンドウの上辺の中心をどこに持っていくかを指定します。
clrForegroundには、ポップアップウィンドウのフォアグラウンドカラーのRGB値を指定します。 システム値を使う場合は-1を指定します。
clrBackgroundには、背景色のRGB値を指定します。-1を指定するとシステムカラーが 使用されます。
rcMarginsには、上下・左右のマージン値を指定します。-1でデフォルトの値が使われます。
pszFontには、フォントを指定します。
フォント名, フォントサイズ, キャラクタセット, (BOLD ITALIC UNDERLINEのいずれか)
のように指定します。各アトリビュートは省略可能です。
では、プログラムを見てみましょう。
メニューとダイアログボックスのリソース・スクリプトです。// help05.rcの一部 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////// // // Menu // MYMENU MENU DISCARDABLE BEGIN POPUP "ファイル(&F)" BEGIN MENUITEM "終了(&X)", IDM_END END POPUP "オプション(&O)" BEGIN MENUITEM "ダイアログを出す(&D)", IDM_DLG END END ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////// // // Dialog // MYDLG DIALOG DISCARDABLE 0, 0, 119, 65 STYLE DS_MODALFRAME | DS_CENTER | DS_CONTEXTHELP | WS_POPUP | WS_CAPTION | WS_SYSMENU CAPTION "状況依存ヘルプ" FONT 9, "MS Pゴシック" BEGIN DEFPUSHBUTTON "OK",IDOK,7,43,50,14 PUSHBUTTON "キャンセル",IDCANCEL,63,43,50,14 LTEXT "関数",IDC_STATIC1,7,7,15,8,SS_NOTIFY LTEXT "BASIC",IDC_STATIC2,7,23,20,8,SS_NOTIFY PUSHBUTTON "Button1",IDC_BUTTON1,60,7,52,15 END
ダイアログボックスのスタイルにはDS_CONTEXTHELPを含めます。
スタティックコントロールのスタイルにSS_NOTIFYを加えてください。 これは、VC++のリソース・エディタでは「テキスト プロパティ」の 「スタイル」タグにある「通知」にチェックを付けておきます。これを 忘れるとWM_CONTEXTMENUメッセージのwParam値はコントロールの ウィンドウハンドルではなく、ダイアログボックスのハンドルとなってしまいます。
htmlhelp.hをインクルードするのとhtmlhelp.libをプロジェクトに加えるのを 忘れないでください。また、chmファイルに含まれているテキストファイルの ヘッダファイルをインクルードするのも忘れないでください。// help05.cpp #ifndef STRICT #define STRICT #endif #include <windows.h> #include <htmlhelp.h> #include "resource.h" #include "popup.h" LRESULT CALLBACK WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); LRESULT CALLBACK MyDlgProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); ATOM InitApp(HINSTANCE); BOOL InitInstance(HINSTANCE, int); char szClassName[] = "help05"; //ウィンドウクラス HINSTANCE hInst; DWORD dwCookie;
HH_INITIALIZEコマンドの実行と、HH_PRETRANSLATEMESSAGEコマンドの使い方に 注意してください。あとは、いつもと同じです。int WINAPI WinMain(HINSTANCE hCurInst, HINSTANCE hPrevInst, LPSTR lpsCmdLine, int nCmdShow) { MSG msg; hInst = hCurInst; if (!InitApp(hCurInst)) return FALSE; if (!InitInstance(hCurInst, nCmdShow)) return FALSE; HtmlHelp(NULL, NULL, HH_INITIALIZE, (DWORD)&dwCookie); while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0)) { if (!HtmlHelp(NULL, NULL, HH_PRETRANSLATEMESSAGE, (DWORD)&msg)) { TranslateMessage(&msg); DispatchMessage(&msg); } } return msg.wParam; }
いつもと同じですが、メインウィンドウの初期サイズを小さめにしています。//ウィンドウ・クラスの登録 ATOM InitApp(HINSTANCE hInst) { WNDCLASSEX wc; wc.cbSize = sizeof(WNDCLASSEX); wc.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW; wc.lpfnWndProc = WndProc; //プロシージャ名 wc.cbClsExtra = 0; wc.cbWndExtra = 0; wc.hInstance = hInst;//インスタンス wc.hIcon = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); wc.hCursor = LoadCursor(NULL, IDC_ARROW); wc.hbrBackground = (HBRUSH)GetStockObject(WHITE_BRUSH); wc.lpszMenuName = "MYMENU"; //メニュー名 wc.lpszClassName = (LPCSTR)szClassName; wc.hIconSm = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); return (RegisterClassEx(&wc)); } //ウィンドウの生成 BOOL InitInstance(HINSTANCE hInst, int nCmdShow) { HWND hWnd; hWnd = CreateWindow(szClassName, "猫でもわかるHTMLヘルプ", //タイトルバーにこの名前が表示されます WS_OVERLAPPEDWINDOW, //ウィンドウの種類 CW_USEDEFAULT, //X座標 CW_USEDEFAULT, //Y座標 300, //幅 180, //高さ NULL, //親ウィンドウのハンドル、親を作るときはNULL NULL, //メニューハンドル、クラスメニューを使うときはNULL hInst, //インスタンスハンドル NULL); if (!hWnd) return FALSE; ShowWindow(hWnd, nCmdShow); UpdateWindow(hWnd); return TRUE; }
親ウィンドウのプロシージャです。//ウィンドウプロシージャ LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hWnd, UINT msg, WPARAM wp, LPARAM lp) { int id; switch (msg) { case WM_COMMAND: switch (LOWORD(wp)) { case IDM_END: SendMessage(hWnd, WM_CLOSE, 0, 0); break; case IDM_DLG: DialogBox(hInst, "MYDLG", hWnd, (DLGPROC)MyDlgProc); break; } break; case WM_CLOSE: id = MessageBox(hWnd, "終了してもよいですか", "終了確認", MB_YESNO | MB_ICONQUESTION); if (id == IDYES) { DestroyWindow(hWnd); } break; case WM_DESTROY: HtmlHelp(NULL, NULL, HH_UNINITIALIZE, (DWORD)dwCookie); PostQuitMessage(0); break; default: return (DefWindowProc(hWnd, msg, wp, lp)); } return 0; }
メニューからIDM_DLGが選択されたらダイアログボックスを表示します。
プログラム終了時にHH_UNINITIALIZEコマンドを実行します。
ダイアログボックスのプロシージャです。LRESULT CALLBACK MyDlgProc(HWND hDlg, UINT msg, WPARAM wp, LPARAM lp) { LPHELPINFO lphi; HH_POPUP hp; static HWND hStatic1, hStatic2, hBut1, hOK, hCancel; DWORD ids[3]; switch (msg) { case WM_INITDIALOG: hStatic1 = GetDlgItem(hDlg, IDC_STATIC1); hStatic2 = GetDlgItem(hDlg, IDC_STATIC2); hBut1 = GetDlgItem(hDlg, IDC_BUTTON1); hOK = GetDlgItem(hDlg, IDOK); hCancel = GetDlgItem(hDlg, IDCANCEL); return TRUE; case WM_CONTEXTMENU: if (wp == (WPARAM)hStatic1) { ids[0] = IDC_STATIC1; ids[1] = IDH_FUNCTION; ids[2] = 0; HtmlHelp(hStatic1, "test.chm::/popup.txt", HH_TP_HELP_CONTEXTMENU, (DWORD)ids); return TRUE; } if (wp == (WPARAM)hStatic2) { ids[0] = IDC_STATIC2; ids[1] = IDH_BASIC; ids[2] = 0; HtmlHelp(hStatic2, "test.chm::/popup.txt", HH_TP_HELP_CONTEXTMENU, (DWORD)ids); } if (wp == (WPARAM)hBut1) { ids[0] = IDC_BUTTON1; ids[1] = IDH_BUTTON1; ids[2] = 0; HtmlHelp(hBut1, "test.chm::/popup.txt", HH_TP_HELP_CONTEXTMENU, (DWORD)ids); return TRUE; } if (wp == (WPARAM)hOK) { ids[0] = IDOK; ids[1] = IDH_OKBUTTON; ids[2] = 0; HtmlHelp(hOK, "test.chm::/popup.txt", HH_TP_HELP_CONTEXTMENU, (DWORD)ids); } if (wp == (WPARAM)hCancel) { ids[0] = IDCANCEL; ids[1] = IDH_CANCELBUTTON; ids[2] = 0; HtmlHelp(hCancel, "test.chm::/popup.txt", HH_TP_HELP_CONTEXTMENU, (DWORD)ids); } return FALSE; case WM_HELP: lphi = (LPHELPINFO)lp; switch (lphi->iCtrlId) { case IDC_STATIC1: memset(&hp, 0, sizeof(HH_POPUP)); hp.cbStruct = sizeof(HH_POPUP); hp.pt.x = lphi->MousePos.x; hp.pt.y = lphi->MousePos.y; hp.clrForeground = RGB(255, 0, 0); hp.clrBackground = -1; hp.rcMargins.left = -1; hp.rcMargins.right = -1; hp.rcMargins.top = -1; hp.rcMargins.bottom = -1; hp.idString = IDH_FUNCTION; HtmlHelp(hStatic1, "test.chm::/popup.txt", HH_DISPLAY_TEXT_POPUP, (DWORD)&hp); break; case IDC_STATIC2: memset(&hp, 0, sizeof(HH_POPUP)); hp.cbStruct = sizeof(HH_POPUP); hp.pt.x = lphi->MousePos.x; hp.pt.y = lphi->MousePos.y; hp.clrForeground = RGB(255, 0, 0); hp.clrBackground = -1; hp.rcMargins.left = -1; hp.rcMargins.right = -1; hp.rcMargins.top = -1; hp.rcMargins.bottom = -1; hp.idString = IDH_BASIC; HtmlHelp(hStatic2, "test.chm::/popup.txt", HH_DISPLAY_TEXT_POPUP, (DWORD)&hp); break; case IDC_BUTTON1: memset(&hp, 0, sizeof(HH_POPUP)); hp.cbStruct = sizeof(HH_POPUP); hp.pt.x = lphi->MousePos.x; hp.pt.y = lphi->MousePos.y; hp.clrForeground = RGB(255, 0, 0); hp.clrBackground = -1; hp.rcMargins.left = -1; hp.rcMargins.right = -1; hp.rcMargins.top = -1; hp.rcMargins.bottom = -1; hp.idString = IDH_BUTTON1; HtmlHelp(hDlg, "test.chm::/popup.txt", HH_DISPLAY_TEXT_POPUP, (DWORD)&hp); break; case IDOK: memset(&hp, 0, sizeof(HH_POPUP)); hp.cbStruct = sizeof(HH_POPUP); hp.pt.x = lphi->MousePos.x; hp.pt.y = lphi->MousePos.y; hp.clrForeground = RGB(255, 0, 0); hp.clrBackground = -1; hp.rcMargins.left = -1; hp.rcMargins.right = -1; hp.rcMargins.top = -1; hp.rcMargins.bottom = -1; hp.idString = IDH_OKBUTTON; HtmlHelp(hDlg, "test.chm::/popup.txt", HH_DISPLAY_TEXT_POPUP, (DWORD)&hp); break; case IDCANCEL: memset(&hp, 0, sizeof(HH_POPUP)); hp.cbStruct = sizeof(HH_POPUP); hp.pt.x = lphi->MousePos.x; hp.pt.y = lphi->MousePos.y; hp.clrForeground = RGB(255, 0, 0); hp.clrBackground = -1; hp.rcMargins.left = -1; hp.rcMargins.right = -1; hp.rcMargins.top = -1; hp.rcMargins.bottom = -1; hp.idString = IDH_CANCELBUTTON; HtmlHelp(hDlg, "test.chm::/popup.txt", HH_DISPLAY_TEXT_POPUP, (DWORD)&hp); break; default: return FALSE; } return TRUE; case WM_COMMAND: switch (LOWORD(wp)) { case IDOK: case IDCANCEL: EndDialog(hDlg, IDOK); return TRUE; } return FALSE; } return FALSE; }
WM_CREATEメッセージが来たらコントロール類のウィンドウハンドルを 取得して、staticな変数に格納しておきます。
WM_CONTEXTMENUメッセージが来たらwParam値で場合分けします。 WM_CONTEXTMENUメッセージについては 第115章を参照してください。
それぞれのウィンドウハンドルごとにHH_TP_HELP_CONTEXTMENU コマンドでポップアップウィンドウを出しています。
WM_CONTEXTMENUメッセージのところではHH_TP_HELP_CONTEXTMENUコマンドで ポップアップウィンドウを出すのが一般的ですが、他のコマンドで出しても 特に問題はありません。
WM_HELPメッセージが来たらコントロールのIDで場合分けして、 HH_HELP構造体をセットしてHH_DISPLAY_TEXT_POPUPコマンドで ポップアップウィンドウを出しています。このコマンドはポップアップウィンドウ の性質を細かく設定できます。
HH_POPUP構造体のptメンバにはHELPINFO構造体のMousePosメンバを 代入している点に注意してください。
HTMLヘルプにテキストファイルを含めなくてもHH_DISPLAY_TEXT_POPUPコマンドで ポップアップウィンドウを表示できるので、そのような使い方も実験してみてください。
Update 30/Sep/2000 By Y.Kumei